国宝を訪ねて 国宝建造物編14

仁科神明宮

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名称 仁科神明宮
所在地 長野県大町市大字社宮本
起点駅・目安時間 松本駅・1時間
経路 大糸線信濃大町駅・タクシー20分
国宝建造物 1 本殿・中門
国宝仏等 なし
その他の国宝 なし
お薦め度 ★★

アルプスの中の神明宮

 最寄り駅は,信濃大町である。バスもあるが便は悪いのでタクシーを利用する。15分ほどで小さな集落に着く。そこの坂道を少し登ると,仁科神明宮はある。
 タクシーにはしばらく待ってもらって,杉木立の中のゆるやかな参道を進む。やがて石段にたどり着く。

 広い石段から始まる杜は,どこまでも深く,真夏の高い日差しをさえぎり,心地よい緑陰を作り出している。
 社殿に至ると,その脇には,樹齢千年は優に越すと思われる杉の御神体があり,まず,こちらに目がいく。それからおもむろに社殿を眺めると,本殿・中門の2棟併せて1件の総白木造の国宝社殿が山の傾斜地に沿って建てられいるのが分かる。
 この二棟をつなぐ「釣屋」も掛けられていて,それらが一体となり,この杜に溶け込んでいるようだ。

×字形にクロスしている千木は,破風からの延長であり,神明造の特徴の一つである。
シンプルかつ直線的な造りが美しい。白木作りに厳かな雰囲気が漂う。
中門(前殿)と本殿に釣屋が掛けられている。本殿は破風板が延長されて千木になっている。また,棟木を直接棟持柱が支えている。
ご神木。とても大きい。否,太いと言うのか?

日本最古の神明造

 帰り際,石段を降りながら社殿を振り返えった時,なぜこの場所に国宝社殿があるのだろうかと,疑問が湧いてきた。
 たしかに神社は日本の至る所にあるが,国宝指定を受けるような神社は,大抵は歴史的にも京都,奈良に集中しているものだ。この仁科神明宮は歴史的には注目されることのない信州の,しかも名も無き小さな集落の社である。

 全国に散在する鎮守の森の中で,この神明宮が国宝に指定されたのは,この社殿が,「神明造り」としては日本最古のものでだからである。
 もっとも,この種の神社は「式年遷宮」という建て替えがなされるのが常であり,この宮の最後のそれは,1636年というから,そう古いものではない。

 この神明造の特徴は,屋根が「切妻」となっていて,入り口が妻側ではなく棟に平行する正面に設えてある点に求められる。「平入り」と呼ばれるこの入り口の位地は,天津神を祀る神社の入り口に用いられている。
 これに対し「妻入り」は国津神を祀る神社で用いられると言われ,大社造と住吉造は,その妻入りである。ちなみに天津神は,大和朝廷が,国津神は,地方豪族がそれぞれ祀る神のことである。
 
 また,この神明造は,棟木を直接支える棟持柱があること,高欄付きの回縁があること等もその特徴に加えられる。 

神明造の代表・伊勢神宮

 この神明造の代表は,無論,伊勢神宮(三重県)であるが,その伊勢神宮は国宝に指定されていない。
 その理由として,次の二つが考えられる。
 一つは,ここは式年遷宮と呼ばれる20年おきの建て替えがが現在も行われていて,そのため建築様式は古来のものが踏襲されてはいるが,建物自体が新しいので,国宝には相応しくない,というもの。
 他の一つは皇室に極めて関係が深い神社であるから国宝に指定しないというもの。
 皇室に関連する施設,財産等は,国宝に指定しない,という国宝行政の不文律がある。そこに合理的な理由は見いだせないが,その姿勢の中で国宝指定が見送られているのではないか,というもの。
 果たして,どちらであろうか?そのふたつであろうか?

神社の建築様式

 太古,山や滝を御神体として祀るとき,その前に拝殿が造られた。また神は平素は天にいると考えられたことから,祭祀の時にだけ「よりしろ」と呼ばれる降臨の目印を作り地上に招き寄せるもの,としていた。いずれにしても,その頃,神社に社殿,本殿が造られることはなかった。
 その後,祭祀が頻繁に行われるようになると,神は普段から地上にいると考えられるようになり,神の居場所に相応しい「神座」が造られるようになる。それが今日の本殿である。
 かようにして日本各地の神社では様々な本殿と拝殿が造られるようになるが,その様式は次の8種に分類されるのが一般である。
 この8種の代表例を国宝建築物に求めると次のようになる。

様式名 名称 所在地 備考
神明造 仁科神明宮 長野県大町市 日本最古の神明造
大社造 神魂神社 島根県松江市 日本最古の大社造
住吉造 住吉大社 大阪府 住吉さん
流造 上賀茂神社 京都市 流造の代表
春日造 円成寺 奈良市 日本最古の春日造
八幡造 宇佐八幡宮 大分県宇佐市 八幡社総本宮
日吉造 日吉大社 滋賀 別名・聖帝様式
八棟造 北野天満宮 京都 別名・権現造


安曇野

 虫取りに夢中になっている子供らの嬌声が,高い杉木立の中に吸い込まれていく。仁科神明宮。
 鎮守の森の,一昔前までは,そこかしこにあった,お宮さんだ。
 

                      炎昼や杜から子らの声も消え (秋雨)

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