国宝を訪ねて 国宝建造物編21

如庵

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名称 如庵
所在地 愛知県犬山市犬山御門先
起点駅・目安時間 名古屋駅・1時間
経路 名鉄犬山線・犬山駅下車バス
国宝建造物 1 茶室如庵
国宝仏等 なし
その他の国宝 なし
お薦め度 ★★★

旅する国宝・如庵

 茶の湯,有楽流の祖,織田有楽斎の建造になる茶室である。
 有楽は信長の実弟であるが,世間ではあまり馴染みがない。しかし,かつて江戸の町に有楽の屋敷があったことからその辺りは「有楽町」と呼ばれていて,こちらの方は,かなり著名である。
 その有楽斎が,大阪冬の陣の後,京都建仁寺の塔頭正伝院に隠棲し,建造したのが茶室「如庵」である。
 その名の由来については,有楽の洗礼名,ジョアンからつけられたという説もあるが,真偽の程は別として,なるほどと思ってしまう。
 
 かつて建仁寺内にあったこの茶室は,その後麻布,大磯,現在の犬山と3度の引越しを経験する。いわば数奇な運命を辿った国宝建造物といえる。しかし,今は,名鉄犬山グランドホテル内の「有楽苑」に安住の地を得て,まるでかつての転変を忘れたかのような風情である。
 井上靖「本覚坊遺文」(講談社文庫)は,利休に仕えた三井寺の本覚坊に師の思い出を語らせ,秀吉より死を賜った事の真相に迫る力作。
 利休賜死事件については,今なお,その理由はもとより自刃の場所さえ明らかになっていない。
 大徳寺山門の利休像,茶器の鑑定により巨額の利益をあげたから,堺衆と通じていた,娘の側室要求の拒絶等,様々な憶測が当時よりあったが,真相の程は不明である。
 野上弥栄子は名著「秀吉と利休」朝鮮出兵の箴言が勘気に触れたとしている。修学院の在に引っ込んだ本覚坊は,時折,利休と交流の深かった武人や利休の孫らから思い出話や話し相手を求められる。本覚坊は,求めに応じて,京の町に出かけていく。そんな武人の一人に有楽がいた。有楽と正伝院の如庵で思い出に耽る。
 有楽は,利休が秀吉に許しを請わなかった理由を,持ち前の豪放磊落な調子で語り始める。
 利休が,茶をそれまでの遊びから戦国時代の武将にとっての出陣の儀式に変換させた,とする。
 なお,国宝の茶室としては,他に京都の妙喜庵(bT9)がある。

逃げの有楽斎

 この有楽斎,実は信長,秀吉,家康の三英傑に仕えている。
 信長の実弟でありながら秀吉,家康のもとでも重用され要職に付いているのは,不思議と言えば不思議であるが,本能寺の変では,信長の嫡男に切腹を迫り自分は逃走している。また,大坂冬の陣では,さっさと大坂城から引き上げている。
 
 そのため世間の評判は,「逃げの有楽」などと呼ばれ芳しくないが,その辺りの事情は,三宅孝太郎「戦国茶闘伝」(洋泉社)に詳しい。
 本書は,天下取りを名物茶器の運命を軸に戦国武将の茶に対する執念をつづる新書版であるが,すんなり読め,しかも,茶の湯の歴史にも深く入り込んでいて肩のこらない好書。
 同様に茶の湯の歴史を紹介している文庫に桑田忠親「茶道の歴史」(講談社学術文庫)がある。茶の湯の歴史から,その精神,道具や周辺の事情等専門用語も平易に解説された入門書的なものとなっている。
 これら2冊は,習い事は大変だが,茶の湯を芸術の一種として概略的に理解したい,との向きには絶好の新書と文庫である。
 その中では,「利休の七哲」にも触れている。

利休七哲(りきゅうしってつ)

 利休の高弟として七人が数えられ「利休の七哲」とよばれる。しかし,その七名が誰かについては争われる。
 一般的には,「江岑夏書」(こうしんげがき)による蒲生氏郷/高山右近/細川忠興/芝山監物/瀬田掃部(かもん)/牧村兵部/古田織部の七人であるが,「茶人系譜」では古田織部にかわって有楽斎が入っている。また,荒木村重/前田利長を加えたりする説もある。
 なお,有楽斎については,七哲の上位にあり別格として入ってないとする説もあるが,いずれにしても,文句なしの一番弟子と考えられる「山上宗二」が入っていないことからすると,利休を別格として,茶の湯を武士階級の独占物にしようとの意図の表れとも考えられる。
 いずれにしても利休を支えたパトロン的な武将の中から選ばれている,と言えそうである。

名鉄犬山グランドホテル・有楽苑

 広い苑内には,旧正伝院書院の他,二つの茶室,茶席や加藤清正由来のつくばい,有楽好みの井筒等が配されていて,わびを重んずる有楽流の全体像が把握できるが,如庵は,その奥まったところ竹林の中にそっと置かれている。
 この如庵を支える柱や板,壁は,度重なる移築のためか疲弊が著しい。軽く触れると,400年の長い苦労が伝わってくるようである。

有楽苑内部。犬山市の中心に位置するが静寂が保たれている。
如庵の内部。3月と11月は内部観覧もできる。

旅のアクセント

 すぐ,近くには,国宝犬山城(bQ0)がある。ひとつばたご(なんじゃもんじゃ)の花が咲く五月がベストか。
 少し足をのばすと「博物館明治村」がある。明治の風情が漂う大人の博物館である。

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