国宝建造物編25| 山号・寺号 | 比叡山延暦寺 |
| 所在地 | 滋賀県大津市坂本本町 |
| 起点駅・目安時間 | 京都駅・1時間 |
| 経路 | JR湖西線比叡山坂本駅,京阪石山坂本線坂本駅からケーブル または京都駅からバス |
| 国宝建造物 | 1 根本中堂 |
| 国宝仏等 | なし |
| その他の国宝 | 9 金銅経箱他 (その他の国宝編bT1) |
| お薦め度 | ★★★ |

「煙雨は比叡の樹林」,と琵琶湖八景にうたわれているとおり,麓は快晴でも山頂を見上げると,薄い和紙に覆われているようで何も見えない。比叡はいつも霧の中である。
行きは,坂本側から登山電車に乗るのがよい。琵琶湖を眼下に眺めながら,斜めに作られた電車はゆっくり登ってゆく。窓からは,深々とした緑の樹林を作り上げている木々の葉が入り込んでくる。
延暦寺は言わずと知れた最澄開宗になる天台宗の総本山である。
天台密教の道場として,修行僧が難行苦行を求めて,山々をかけずり回る姿が今でもみられる。
この歴史に冠たる延暦寺も,最澄の死後は山門派と寺門派とに分かれて抗争を続け,寺門派を園城寺(三井寺,bQ4)に追いやった山門派は僧兵を擁して,朝廷に強訴を幾度となく繰り返した。

しかし,鎌倉時代に入ると,やがて最澄の教えが結実し,法然,栄西,道元,日蓮など日本の歴史に残る高僧を輩出し,仏教界に大きな影響を与えることになる。
しかし,本山はその後も,法力,武力を盾に,政治に関与し,ついには信長に対抗した挙げ句,全山焼き討ちの憂き目に遭う。
いずれにしても,仏教の役割が鎮護国家から大衆救済へと変わってゆく中にあって,日本仏教の揺籃期を支えた寺であったことは間違いなく,高弟により,浄土宗,臨済宗,曹洞宗,日蓮宗がそれぞれ開宗されたことをみても,天台宗大本山というにとどまらず日本仏教界の総本山といえる。


根本中堂は,8度焼失の憂き目にあっている。現在の国宝根本中堂は,江戸初期の再建だが,天台密教初期の様式を忠実に再現している。現在の寺勢は,この頃整う。
外陣から中に足を踏み入れると,中陣にいたり,さらに前に進み目が慣れてくると,薄明かりの中石畳が敷き詰められた内陣が見えるようになる。1200年の間一度として絶えることの無かった燈明が小さな火を燃やし続けている。その火にかろうじて薬師如来が照らし出されているのだがよく見えない。そして,その後部,その閉ざされた扉の奥には,最澄自ら鑿をふるったと言われる秘仏薬師如来が祀られているという。
根本中堂の本尊は薬師如来である。
天台宗と言えば,台蜜,というように密教的イメージが強い。しかし,その面もさることながら後に様々な鎌倉仏教を多く輩出した点も見逃せない。
天台宗が法華経をその拠り所とする宗派であることを考えると,浄土宗,禅宗,日蓮宗が生まれ育ったことも理解できるが,それと薬師如来とはどのように結びつくのか不思議である。ちなみに,最澄が学んだ唐の天台山の本尊は文殊菩薩である。
最澄と空海,二人は言うまでもなく日本仏教発展の立役者であるが,日本仏教界のエリート最澄に対し,空海はひょんな事からアジア密教界のエリートになる。
最澄は密教を修めるべく入唐(にっとう)するが,彼がもたらした密教は実は密教ではなかった。
最澄と同じ時,舟こそ異なるが,空海も入唐し,当時世界に冠たる中国密教界の教主恵果からあまたの高弟,弟子を差し置いて,後継者に指名される。
密教奥義を学び尽くした空海は,しばらくして夥しい教典,法具,仏像を携えて帰国する。
帰朝早々に確固たる地位いた最澄であるが,貴族の渇望する密教奥義を修めるべく空海に教典の借り出しや灌頂(かんじょう)を乞い,密教の導入,天台宗との融合を試みる。
谷崎潤一郎「刺青・秘密」(新潮文庫)の中に短編「二人の稚児」がおさめられている。幼い頃,事情があって比叡山に登り,生涯を,ここで暮らすことになった千寿丸と瑠璃光丸。二人は,比叡山から一歩も出ることなく,そして女人を見ることなく思春期を迎える。幼い頃から,女人は人を騙す悪い鬼と教えられた二人は,しかし,幼い頃のやさしかった母のかすかな面影が頭からはなれない。
比叡の山から眼下に見下ろす近江の町をみながらあれこれ思いをめぐらす二人。やがてせつなく悲しい結末が。谷崎の耽美的短編の最高傑作。

京都側から入山した時は,近江側へ降りるのがよい。時間があれば,坂本駅近くの国宝日吉大社に立寄ることができる。
近江側から登った時は,バスで比叡の山系をゆっくり京都方面に南下するのがよい。京の雑踏に入ると銀閣寺は近い。
|
|
||||
| 国宝建造物編 8エリア → |
関東・東北エリア | 東海・北陸エリア | 滋賀エリア | 京都エリア |
| 奈良エリア | 大阪・和歌山・兵庫エリア | 中国地方エリア | 九州・四国エリア | |
| 国宝を訪ねてTop | 国宝建造物編Home | 国宝仏編Home | その他の国宝編Home | 国宝情報Home |
|
|
||||
| copyright. 2002. kokuhoworld .all rights reserved | ||||