国宝建造物編51| 名称 | 賀茂別雷神社:かもわけいかずちじんじゃ |
| 所在地 | 京都市北区上賀茂本山 |
| 起点駅・目安時間 | 京都駅・40分 |
| 経路 | 地下鉄北大路駅からバス |
| 国宝建造物 | 1 本殿及び権殿 |
| 国宝仏等 | なし |
| その他の国宝 | なし |
| お薦め度 | ★★★ |
二ノ鳥居から立砂・拝殿を眺める。
拝殿のさらに奥に本殿および権殿があるが,もちろん撮影禁止だ。
京の町の北西から流れ出る賀茂川は,下鴨神社辺りで北東から流れてくる高野川と合流し,鴨川となり下ってゆく。その賀茂川を下鴨神社から少し上流に遡ったあたりに上賀茂神社がある。
(上賀茂神社と下鴨神社,賀茂川と鴨川,カモの字の違いに注意)
上賀茂神社は広大な社の中にある神社だ。しかし,杜といっても,そこいらの神社でよくみかける森ではない。馬場のような芝生に覆われた平坦地である。正確には馬場であり,事実,毎年,ここで「走馬」と呼ばれる,烏帽子,紫奴袴を身にまとった乗尻(騎手)が一ノ鳥居から二ノ鳥居に向かって走る古式豊かな行事が行われる。
一ノ鳥居から真ん中に伸びる一本の砂利道を二ノ鳥居まで進むと,その辺りからだんだん神域を思わせる森が迎えてくれる。日差しの高いときには,涼を求めて森の中に入る。そこには,水に恵まれた森があり,ならの小川と呼ばれる小さな川が涼やかに流れている。川面に小魚を探しながら進んで行くと,小川はさらに細い小川に分かれる。御手洗川と御物忌川である。

この二手に分かれるあたりに「立砂」と呼ばれる「神のよりしろ」が造られている。
昔,神は平素は天にいて,祭礼の日にだけ降りてきた。そのための目印がよりしろである。
ちなみに,昔は本殿はなく拝殿だけが造られていた。しかし,今は,本殿を造り,神の居場所を定めそこで祀るのが一般だ。
小さな御手洗川に架けられたこれまた小さな橋をわたると,否,跨ぐと二つの小川に守られるようにして佇む静かな社に至る。ここからが神域だ。
楼門の奥に国宝の本殿と権殿が並んで鎮座するようであるが,一部分しか見えてこない。その一部でもカメラに残そうとするが,撮影禁止の看板が目に入る。
どうしても見たい向きには,本殿および権殿の特別公開日に500円支払って見学することになる。
なお,権殿とは,本殿のいわば予備棟であり,本殿に差し障りがある時のために予め造られている。ちなみに,一番の差し障りは,やはり遷宮である。
遷宮とは,定期的に行われる本殿の改築のことであるが,ここ上賀茂神社でも一時中断したが,古来から絶えることなく行われているのは伊勢神宮の式年遷宮だけといわれている。
では,他の神社は全く遷宮を行わないかというと,そうでもないようである。最近は各地の神社で復活しているようであるが,費用,その他の点から簡略な様式が用いられていて,全部を建て替えるのではなくその一部を新しくすることにより遷宮を実施しているようである。
ここ,上賀茂神社でも,今回の遷宮では,数億円かけて本殿及び権殿をはじめ様々な建物に付けられた金具の装飾品を新しくする予定の様である。
この上加茂神社は神社建築様式の一つ「流造」の代表と言われている。
流造は,屋根は切り妻,入り口は平入りとなっていて,入り口前には階段が造られている。そして,正面の屋根が階段の上まで延長されて流れるような庇となっているのが,流造の最大の特徴であると伴にその名前の由来でもある。
神社の多くがこの流造と春日大社でお馴染みの春日造で占められている。
上賀茂神社は,京の風物詩の一つ,5月に行われる「葵祭」の最終目的地である。葵祭は,この上賀茂神社と下鴨神社,それに平安神宮を舞台として繰り広げられる王朝絵巻の再現である。
上賀茂神社の中を流れる御手洗川の名もこの祭りと無縁ではない。祭りのお祓い神事に際して身を浄めるためにこの川で斎王代が手を洗うところからいつしか御手洗川と呼ばれるようになった。
毎年5月15日に,平安時代の装束である直衣(のうし)や狩衣(かりぎぬ)に身を包んだ平安人が馬に乗り,あるいは牛を引き都大路を練り歩く。中でも赤い衣装を身につけた女御,女房の一列はあたりの新緑に映え一際艶やかである。
「源氏物語」の葵の帖には,葵祭見物のための牛車の位置取りをめぐり,源氏の正室「葵の君」の従者らと「六条御息所」の従者らとが争う場面がある。そのいざこざの後,物語は,怒りに震える六条御息所が,嫉妬の余り,葵の君を呪詛し殺してしまうという急激な展開をみせる。
謡曲「葵上」はこれを題材としているが,こちらは,六条御息所の霊が嫉妬に燃えて,葵の上にのしかかり,牛車に乗せて連れ去ろうとするところに,横川の小聖があらわれ,二人が格闘,応酬し,六条御息所の霊が説諭に負けて退散するという,お定まりのもの。
謡曲とは,能の台本であり,観阿弥,世阿弥の作品が著名であるが,この「葵上」のように源氏物語や平家物語などの古典文学にその題材を求めているものが多い。
森を慎ましやかに流れる御手洗川とならの小川がそこを抜ける辺りから,上賀茂神社に仕えた神官達が形成した町,「社家町」が始まる。
小さな流れの上に石の小橋を家毎に置く長く美しい町並みが続いている。
日本のグルメ第一号と言っても良い北大路魯山人は,この町の出身。
陶芸をはじめとする様々な芸術に造詣の深い氏の作品は,色々なところで目にすることができる。
ついでながら,上賀茂神社へは,地下鉄「北大路駅」からバス,タクシーが便利である。
近くには陶芸愛好家の二つの聖地の一つ「高麗美術館」がある。青磁,白磁の逸品が所狭しと並べられている。是非立ち寄りたい。
重ねて,ついでながら,他の一つは大阪の「大阪市立東洋陶磁美術館」である,がどうであろうか。
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