国宝を訪ねて 国宝建造物編54

高山寺

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国宝・高山寺石水院

 ふりつみし 高嶺のみ雪 とけにけり
         清滝川の 水のしらなみ    

西行・山家集
山号・寺号 栂尾山高山寺
所在地 京都市右京区梅ヶ畑栂尾
起点駅・目安時間 京都駅・60分
経路 バス60分 
国宝建造物 1 石水院
国宝仏等 なし
その他の国宝 7 鳥獣戯画 他 
お薦め度 ★★★

国宝の縁側から眺める紅葉の美しさ

 神護寺の方からが表参道。バス停の方からが裏参道。どちらも長い樹林の中の坂道を,時折周山街道を行き交う車の音をききながらゆっくりと登っていく。やがてそれも耳に届かなくなる頃,深閑とした佇まいの高山寺に辿り着く。国宝石水院は高山寺の一番とったりの建物だ。
 案内で拝観料を払い廊下を進む。途中池の上の粗末な渡り廊下を通過する。
 紅葉の季節,緋色の毛氈がひかれた廊下に出て,腰を落ち着けると,深く落ち込む山肌のところどころに真っ赤に色ずいた紅葉が,アクセントのように貼り付けてある。
 この高山寺は,食事処の茶碗を手にとった時,ウサギが相撲を取ったり,かえるが笹の葉をかついだりしている図柄を見かけることがあるが,あの「鳥獣戯画」の原画を所蔵している寺として有名である。その茶碗をよくみると短冊の図柄の中に「高山寺」と記されている。
 もっとも,現在,高山寺のガラスケースに展示されている「鳥獣戯画」は複製で,本物は東京と京都の国立博物館に寄託中である。しかし,複製でも雰囲気は伝わってくるが,想像していたよりも,とても小さいことに驚かされる。

 全4巻からなるこの戯画は,鳥羽僧正の作と伝えられるが,12世紀から13世紀中頃にかけて制作された巻物の一種で,その作風,筆致などから同一人物の作ではないと考えられている。
 この猿は,誰だ,山法師のことか,この蛙は,誰だ,寺門派か?戯画であるが,モデルは色々取りざたされている。

美しき不犯の青年僧・明恵

 また,この寺は,修行のため,雑念を取り払おうと耳まで削ぎ落としたという清純の僧,明恵上人の寺としても有名である。明恵は,荒廃していた神護寺の別院を整備し,堂宇を整え高山寺と号下する。
 この明恵については,白洲正子「明恵上人」(講談社文芸文庫)が氏独自の取材網を駆使して詳しい。しかし,氏の文章の特徴である,ですます調とである調の混交は相変わらずであり,また,わずかな根拠で即座に断定してしまうのも気になるところ。しかし,これらを割り引いても,明恵を理解するには,一番手っ取り早い読み物といえる。

阿留辺幾夜宇和(あるべきようわ)

 「人は阿留辺幾夜宇和の七文字をたもつべきなり。僧は僧のあるべき様,俗は俗のあるべき様なり。乃至,帝王は帝王のあるべき様,臣下は臣下のあるべき様なり。このあるべき様をあざむくゆえに,一切悪しきなり。」阿留辺幾夜宇和は「栂尾明恵上人遺訓」の別名。明恵の信条の一端がうかがえる。
 石水院の壁に掲げられている。






義湘と善妙

 この高山寺には,国宝・鳥獣戯画の他にも国宝,重文の絵画や書跡が多くある。その中に美しい修行僧義湘と新羅の姫善妙の悲恋物語が絵巻物として残されている。「華厳宗祖師絵伝」がそれである。
 新羅の姫が修行僧に恋をするが,修行に専念することを誓った義湘は,それを受け入れることができない。やがて義湘は修行を終えて新羅から故国に帰ることとなり,善妙は見送ろうとするが間に合わない。岸壁から海洋の彼方に進んだ義湘の船を見送りながら,悲しみの余り善妙は,海に飛び込む。やがて姫は,龍に姿を変え義湘の船を守り,無事国まで送り届ける。
 この義湘に明恵上人の姿を重ねる者も多い。事実,明恵に想いを寄せた女性も多く,美しい僧としての誉れが高いが,この絵伝の中の義湘の顔は,何故かしらおよそ女性から熱愛を受けるに相応しくない,実に情けない顔となっているのは,残念。

周山街道と清滝川

 高山寺が取り付いている山が渓となって落ちた先に,清滝川の清流が走り,それに沿うように周山街道が北に伸びている。
 北山杉に覆われたその街道をしばらく車を走らせると,「山国」と呼ばれる辺りに出る。その辺りは,昔,京の町に杉と鮎を供給していたところである。
 川端康成「古都」(新潮文庫)の舞台となった「中川」の集落は,清滝川の岸辺からせり上がるように伸びている北山杉に囲まれた森の中にある。

 西陣の織物問屋の一人娘千重子は,自分が捨て子であったことを知るが,,養親の元で何不自由なく成長する。やがて千重子は,自分の出自を知りたいと強く思うようになるが,そんなある祇園祭の夜,自分と瓜二つの娘,苗子に偶然出会う。苗子は中川の集落で暮らしている。
 京の風物詩と移ろいゆく四季の中で,二人の姉妹の互いの気遣いが清冽にしかも哀しく行き交う,川端康成の珠玉の名品。

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