国宝建造物編57

| 山号・寺号 | 朝日山平等院 |
| 所在地 | 宇治市宇治蓮華 |
| 起点駅・目安時間 | 京都駅・40分 |
| 経路 | JR奈良線(快速)宇治駅下車・徒歩10分 |
| 国宝建造物 | 1 鳳凰堂 |
| 国宝仏等 | 3 阿弥陀如来座像・雲中供養菩薩像・天蓋(国宝仏編bQ1) |
| その他の国宝 | 3 (その他の国宝編bS1) |
| 公開情報 | 公開 |
| お薦め度 | ★★★★ |
JR宇治駅から京都方面に国道に沿って歩くと宇治川に出る。
普段から水量の多い宇治川の瀬音は,国道の喧噪にも負けないくらいであるが,雨後は,その流れは一層速く,瀬音も一段と大きくなる。そんな時,この宇治橋から見ると川に落ち込んでいる山肌には霞が,川面には煙のような靄が立ちのぼる。
宇治橋から見る雨後の宇治川は,ことに美しい。天瀬に落ちた雨は音を成して集まり,山間を縫うようにして流れる川に勢いよく流れる。塔の島と呼ばれる浮島とそれにかかる朝霧橋をも飲み込みそうな勢いである。
宇治橋に立ち,足下を流れる川の源流が琵琶湖にあることを思うとき,近江の国と大和の地,さらには平安京,難波の海,それらを繋ぐ大きな歴史の舞台の中心に,この橋があることに気づかされる。
宇治川を少し遡り右に反れると,平等院の裏門に辿り着く。
宇治は,当時,都の貴族達の別荘が立ち並ぶ風光明媚な地として名高かった。その宇治の地に源融が建てた別荘を藤原道長が買い取り,末法思想が蔓延する中,息子頼道が寺に改め,平等院と号した。当時は,多くの伽藍を有する壮大な寺院であったが,現在の平等院の寺域は意外に狭い。
その平等院の中心は,何と言っても鳳凰堂と呼ばれる阿弥陀堂である。
鳳凰堂の正面には,阿字池と呼ばれる池がある。否,正確には,池の中に中島があり鳳凰堂はその島の中に立てられている。
平等院鳳凰堂は,本尊の阿弥陀如来を祀る中堂と左右の翼廊,尾廊からなり,中堂大棟に乗る一対の鳳凰の存在ばかりではなく,建物自体の形状からも鳳凰堂と呼ばれるに相応しい。
阿弥陀堂を正面から眺めてみよう。眼前の水面には羽を休めようと今舞い降りたばかりのつがいの鳳凰が浮かんでいる。
目を中堂に転ずると,扉の上,格子戸の中心に丸窓が設えてあり,そこから本尊,阿弥陀仏の金箔で彩られた荘厳なお顔がのぞかれる。
対岸の仏徳山から朝日が差し込む時,一層黄金色に荘厳される。
池を右に少し回る。受付で特別拝観料を払うと中堂内部への案内が受けられる。 丈六の本尊阿弥陀仏座像は,大仏師「定朝」の作品と確定されている唯一の仏像である。当時は,金箔があてられ黄金色に輝いていたが,近時,色褪せが進行し修復を余儀なくされ,平成の大修理が19年9月まで行われた。
現在は,平常通り公開されているが,極彩色の修繕を想像して赴いたが,意外なことに外観上それと悟られるような変化はなく,落ち着いた節度ある修復であった。平等院の見識に敬意を表したい。

この中堂の中には,本尊阿弥陀仏座像の他に,天蓋,雲中供養菩薩像(国宝仏編bQ1),さらには鳳凰堂中堂壁扉画と4件の国宝がある。なた,中堂の屋根には一対の鳳凰,さらには梵鐘(その他の国宝編bS1)と鳳凰堂の他に6件の国宝を有している。
一首は,栄華を極めた藤原道長の余りにも有名な歌である。不遜,傲りともとられるこの歌ではあるが,しかし,満月はやがて欠ける。この世に完璧なものは何もないのである。全てのものはやがて変化し,変貌を遂げる。満月は,完成されたものが必ず変わりゆくことの,そんな象徴である。このことに道長が気付いていないはずはない。栄華の一時を心ゆくまで噛みしめる,そんな詠であろうか。
山頭火もこの地を訪れている。
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