山号・寺号 | 興福寺 |
所在地 | 奈良市登大路町 |
起点駅・目安時間 | 京都駅・30分 |
経路 | 近鉄奈良駅・徒歩5分 |
国宝建造物 | 4 北円堂・三重塔・五重塔・東金堂 |
国宝仏 | 16 仏頭・十大弟子立像・八部衆立像 板彫十二神将立像・四天王立像(東金堂) 四天王立像(北円堂)・金剛力士立像 天燈鬼,龍燈鬼立像・千手観音立像 維摩居士座像・文殊菩薩座像・十二神将立像 弥勒仏座像・無著菩薩,世親菩薩立像 不空羂索観音座像・法相六祖座像 四天王立像(南円堂)(国宝仏編bQ5) |
その他の国宝 | 5 梵鐘他(その他の国宝編bS2) |
公開情報 | 北円堂は春と秋に特別公開 |
お薦め度 | ★★★★★ |
近鉄奈良駅のすぐ近くに国宝の山に埋もれた巨大な伽藍がある。猿沢の池の畔から,石段を登りながら大きな五重塔を仰ぎ見る。これが,明治時代,風呂の薪として売りに出された塔だ。
石段を登り,境内とおぼしき平坦地の中央に立ち360度見回す。
五重塔,金講堂,国宝館,北円堂,最近再建された南円堂。そしてその陰に隠れる三重塔,これらが,学校のグラウンドのような障害物の少ない平坦な境内の中に散見される。
この寺が,飾り気のない境内の中にあり,他の寺とは,雰囲気が異なってみえるのは,これまでかいくぐってきた幾多の歴史の波とは無関係ではないようだ。
また,この寺ほど,未曾有の災難に見舞われ,時代に翻弄された寺も少ないであろう。時代とともに名を変え,所を変えて栄枯盛衰を繰り返してもきている。まさに波瀾万丈の寺である。それも全て,日本最強の貴族,藤原氏の氏寺との由緒がなせる技である。
その起源は,鏡女王が夫中臣鎌足の病気平癒を祈願して京都山科に建てた山階寺(やましなでら)にさかのぼる。その後,天武朝には,藤原京に移され厩坂寺(うまやさかでら)と称し,平城遷都にともない不比等の手により現在の地に移転すると名を興福寺とする。
藤原氏の隆盛とともに寺勢は興隆の一途を辿るが,貴族政治の終焉とともに寺運も急速に衰える。
それに追い打ちをかけるように「重衡の南都焼き討ち」や,明治の「廃仏毀釈」が襲う。それらの受難の時を終えて,やっと今,ついの栖を見つけた寺である。
一体,かくも人は簡単にものを破壊できるのだろうか。
大仏殿を中心とする平家による南都の焼き討ち,信長の延暦寺焼き討ち,秀吉も義経も皆,簡単に火を放つ。連綿と繋がれた歴史に対する畏敬の念は微塵もない。 ましてや,神社仏閣に対するものであってみれば,不遜きわまりない態度である。
好きな歴史上の人物はと問われ,信長,秀吉と答えていては、歴史の不勉強を自白するようなものである。
五重塔の組み物
そして,最後に国家による蛮行が明治に入って繰り広げられる。南都や延暦寺の焼き討ちは,時の権力者とはいえ,一武将によるものである。廃仏毀希釈はこれらとは大分おもむきを異にする。
文明もある程度は開花していたと思われる明治の時代に,どうしてこのようなことがまかり通ったのか。
原因不明とも言える蛮行,「廃仏毀釈」や無抵抗だった僧侶達の自堕落な態度等について,司馬遼太郎「街道を行く24近江散歩・奈良散歩」(朝日文庫)が,五重塔・阿修羅において端的に書き残している。
そんな蛮行の後でも,奇跡的に残った文化財が,国宝館に所狭しと展示されている。優美なそして雄大な諸仏達は,これまで,幾多の戦火,災いの炎の中に,人間の愚行を繰り返し見てきたことだろう。かっと見開いた眼は,確実に重衡の兵火を,またその引き金ともなった奈良法師の横暴を見てきている。ただ,語ろうとしないだけだ。
中には見まいとする眼もある。そのようなことは忘れようとしている眼もある。
そんな諸仏の中で,近年,阿修羅像に人気が集まっている。そのやさしい顔立ちは美少年と言うに相応しく特に女性の支持が高いようだ。
しかし,その脇に並ぶ十大弟子立像もすばらしい。阿修羅像の作者と同じ「将軍万福」の手になる,やさしいまなざしの脇仏である。
何故,醜悪な人間の行為に怒ることもなく,慈悲心を給うのか。それとも心の奥底で,怒っているのか。語りかけても答えてはくれない。
北円堂の内部は,4,5月10,11月の特別観覧期に公開される。その典雅な趣は外からでも十分に鑑賞できるが,御堂の中には,運慶の作になる弥勒仏,無著,世親の各菩薩の国宝仏3体が鎮座する。やはりその時に訪れるのがベスト。
なお,境内で一際異彩を放つ南円堂は,最近になって再建された西国霊場33ケ所の9番札所であり,巡礼者があとを絶たない。
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