国宝建造物編66
| 山号・寺号 | 忍辱山円成寺 |
| 所在地 | 奈良市忍辱山町 |
| 起点駅・目安時間 | 京都駅・1時間30分 |
| 経路 | JR・近鉄奈良駅・バス30分 |
| 国宝建造物 | 1 春日堂・白山堂 |
| 国宝仏等 | 1 大日如来座像(国宝仏編bR2) |
| その他の国宝 | なし |
| お薦め度 | ★★★★ |
山道を登ってきたバスが少し下り始めると山の中腹あたりであろうか僅かに形成された集落に出た。忍辱山(にんにくせん)円成寺前の案内にバス停を降りる。バス停からすぐに,平安中期の築庭で国の名勝指定もされている浄土庭園が広がる。手入れの行き届いた庭は山門の手前にあり,寺域とは一線が画されていてる。そのため拝観料の対象外となっていて,里人の格好の散歩コースとなっている。
その庭園から,数段の階段を登り桜門に向かう。案内で拝観料を支払い足を踏み入れるが,境内はすこぶる狭小である。わずかな平地に,本堂,多宝塔,そして国宝春日堂・白山堂が置かれている。
本堂には本尊の阿弥陀如来座像が安置されているが,こちらは重要文化財である。
国宝仏は,平成に新築なった多宝塔の中に安置されている。青年の頃の運慶が一年をかけて彫り上げたとされる大日如来座像である。
本堂を過ぎて奥に進むと,鎌倉時代に制作された国宝春日堂,白山堂が秋の草木の中に置き去りにでもされたかのように無造作に置かれている。
野ざらしの割には,保存状態はよい。
というのも,これまでは保存のため長年にわたり覆屋内に保存されていたからである。しかし,今ではそれも取り払われ,萩の葎の中で余命を楽しんでいるようにも見える。
建造物は,やがて朽ち果てる。全てのものが,刻一刻のうちに変わっている。それを止めようとするのは,単なる傲慢に過ぎない。これらのことがここでは,当たり前のように行われている。
身の丈2メートルにもみたないこの社は,国宝建造物の中では,もっとも小さいものである。
では,何のためにこのような小さな社が造られたのだろうか?
有力なのは春日大社の式年遷宮に際して旧社殿がここ円成寺に譲渡されたのではないか,との説明である。かつて,この二つの社は円成寺の鎮守社として,春日社,白山社と呼ばれていたようである。
なお,小さな国宝建造物としては,他に海龍王寺および元興寺極楽坊の小塔がある。
また,鎌倉時代に造られたこの双子の社は春日造の社として,日本最古のものである。

神社の建築様式としては,大社造,住吉造等大きく8種に分類できるが,このうちの一つ春日造の特徴は何と言っても,本殿入り口に至る階段を覆うあたりの屋根の形状である。
階段の上の屋根は,入り口が妻入りであるので妻側から下りてくるが,その両端が本殿の屋根となだらかな曲線で連続し,一体のものとなる。また,そのため妻側に三角の破風が出来る。
春日造の特徴として,他に前面に高欄つきの縁があること,棟の上に置千木と堅魚木を載せること,等をあげることができる。
このような造りは春日大社を代表例として全国に広まった。
ところで,ここ円成寺はコテコテの真言宗寺院であるが,何故そこに神社である春日堂が建てられているか,疑問が生ずる。
これは,いわゆる神仏習合のなごりであり,神社の中に神宮寺が建てられたのと同様,寺院の中に神社が祀られて,それらは鎮守堂,あるいは護法堂と呼ばれていた。
中には直接神の名をとって,春日堂,白山堂,新羅善神堂と呼ばれる場合もあった。ここ円成寺の春日堂はその名残である。
円成寺の山号は忍辱山である。
「にんにく」とは,あまり馴染みのない言葉であるが,これは菩薩が仏になるために行う六つの修行,すなわち六波羅蜜の一つであり,苦難に耐え忍んで悟りを目指すことを意味する。
なお,残りの五つは,布施,持戒,精進,禅定,智恵または般若(波羅蜜)である。
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