国宝建造物編70| 山号・寺号 | 法性山般若寺 |
| 所在地 | 奈良市般若寺町 |
| 起点駅・目安時間 | 京都駅・50分 |
| 経路 | 近鉄奈良駅・バス |
| 国宝建造物 | 1 楼門 |
| 国宝仏等 | なし |
| その他の国宝 | なし |
| お薦め度 | ★★★★ |
かつて,京から南都に向かう京街道と呼ばれた古道があった。奈良坂はその途中にあり,そこは東に行けば伊勢,南に下れば奈良という古代からの交通の要衝であった。現在は,当時の道筋と異なるようだが,般若寺は,この奈良坂から京街道にそって少し下りかかったあたりにある。この道をさらに下るとやがて東大寺転害門の前に出る。
現在,国宝の楼門はバス通りから一本中に入っていて,しかもさして大きくはないことから見過ごしてしまいそうだ。この楼門だけなら拝観料を払うまでもなく通りから十分に鑑賞できる。しかし,ここは一旦境内に入り,お寺をまず拝見することにする。
この寺は,「コスモス寺」あるいは「花の寺」とも呼ばれているように,四季の移り変わりに応じて色々な花が楽しめるように工夫されている。このような工夫は,観光客を呼ぶための努力としては,仕方がない部分もあるが,行き過ぎると考えものである。
その点,般若寺は,さりげなく手が入っていることがうかがわれ気持ちが良い。しかし,寺の静寂や荒れゆくままの自然な姿を楽しみたい向きには,コスモスの盛りが過ぎ,枯れた枝の所々に,ゆく秋を惜しむかのように最後のコスモスが咲いている頃訪ねるとよい。
11月を過ぎると,境内の順路脇の花壇には,コスモスの野性的な茎がむき出しになり,さながら荒れ寺のようになる。
そんな花の寺にアクセントを添えるのが大きな石造りの十三重塔である。
| 石の十三重塔付近から楼門を眺めたところ | |
| 表通りから楼門を見る。門の中,遠くに十三重塔が見える。 |
寺を辞し,通りに出て国宝楼門に回ってみる。門の中にあの巨大な石造十三重塔がすっぽり入って見える。
この般若寺は平家物語のハイライトの一つ南都炎上にも登場する。度重なる興福寺の横暴に業をにやした清盛は,年の瀬も押し迫った師走の末,南都襲撃の命を下す。
「さらば南都を攻めよや」
それを察知した興福寺の僧兵は奈良坂とここ般若寺の前に砦を造るが,重衡率いる4万の兵に打ち破られる。
重衡は南都に火を放つように命ずるが,火は折からの強風にあおられまたたくまに燃え広がり,やがて東大寺大仏殿に至る。
京街道は奈良の町にかけてなだらかに下っていることから,このあたり一帯からは紅蓮の炎に荘厳されながら,為す術もなく溶け出してゆく黄金の廬毘舎那仏の終焉が,手に取るように見えたであろう。
しかし,この南都炎上は,東大寺ばかりでなく,この般若寺をも巻き込む。般若寺はこの時灰燼に帰し,現在の御堂はその後の再建にかかるものである。
なお,平家物語には般若寺は再度登場する。
平家が滅亡の一途を辿る頃,重衡は捉えられ南都に連れ戻される。木津川の河原で斬首されその首が般若寺の大鳥居に晒される。
般若とは,菩薩が仏になるために求められる6つの修行,すなわち六波羅蜜の一つ,真理を見つめる目を養う修行である。
真理を見つめることは容易なことではない。あの般若の面のような様相にならないと,無理なのだろう。
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