国宝を訪ねて国宝建造物編109

出雲大社

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名称 出雲大社
所在 島根県出雲市大社町杵築東
起点駅・目安時間 松江駅・1時間
経路 JR出雲市駅・バスまたは一畑電鉄松江温泉から大社駅徒歩
国宝建造物 1 本殿
国宝彫刻等 なし
その他の国宝 1工芸品(秋野鹿蒔絵手箱)
お薦め度 ★★★★

国宝・出雲大社本殿

神話の故郷・出雲

 陽光に煌めく宍道湖の湖面を左に見ながら,一両編成の電車が田園の中をゆっくり進む。途中の駅で一度乗換えて,松江から1時間ほどで大社駅に到着する。町の中心にそびえ立つコンクリート製の大鳥居を左に見て出雲そばの看板が目に付く長い門前町を通りぬけるとやがて大きな鳥居に至る。ここからが大社の神域だ。
 
 森厳な雰囲気が漂う中,4列の松並木の間に敷き詰められた砂礫を踏みしめて一度下りまた登ると遠くに大社造りの屋根が見えるようになる。

 本殿の前には大きな注連縄のかけられた拝殿がある。その大きな注連縄の下から硬貨を投げ注連縄の藁の中に収まれば願い事が叶うという。多くの老若男女が我を忘れて興じている。ここで願をかけて,本殿でもお願いして,ということなのだろうか。

 その本殿,これまで目にした神社のそれとは,規模が全く違う。一周りどころか二周りほど大きい。檜皮葺の屋根は,まるで天をうかがうかのように高く,しかし,反りは鷺が羽根を広げたよに美しい。
 
 檜皮葺の屋根のところどころは苔むして,その緑が屋根の茶に,まるでパッチワークのように鮮やかに映えている。それを社を取り囲む木々の緑がスッポリと包み込んでいる。
 折しも雨があがったばかりの境内は,まるで水煙が立ちこめているかのように,地から蒸気が湧き上がり,荘厳でしかも幽艶な雰囲気が漂っている。

 8万あるとも言われる神社の中にも,旧社格の官幣大社,国幣大社は沢山あるが,その中で「大社」と呼ばれるのはこの出雲大社だけである。
 まさに大社と呼ぶに相応しい偉容である。

古代の巨大社

 平成11年になって,出雲大社のかつての偉容が明らかになった。土中から柱の跡が発見されたのだ。直径1メートル以上,長さ24メートルの木材3本を金輪で束ね1本とし,そのような柱を全部で9本立てて台座をしつらえ,その上に現在と同様の規模の神殿,すなわち高さ24メートルの構造物が載せられていたというものである。
 全高16丈(48メートル)は,大仏殿の高さと同じである。中世以前の日本には,この大社と大仏殿の二つの巨大な木造建築物があったことになる。

 しかし,太古の昔は,更にその2倍の高さだったという。この辺りの真偽のほどはさておくとしても,平安時代の記録には,高さ16丈の記録があることから,今回の発見は,これが実証されたことになる。

 巨大な大社を見るとき,こような材木がどこで成長していたのか。どのようにして切り出され,どのようにして運ばれたのか,考えてしまう。

 材木を集めるために,どれだけ多くの人が人跡未開の深山に分け入り,どれほどの犠牲を払って切り出されたのだろうか。切り出しを促進するために懸賞金がかけられていたという。
 
 運搬の妨げとなる夥しい数の木が切られ,運び出しのための道が造られたのは当然としても,筏に組んで運搬するために,臨時のダムを造り水嵩をあげたと言われている。
 
 普段は,塀の外から上半分ほどが見えるに過ぎないが,正月の参詣時は,もう少しおくまで入ることが許されるので,できれば,その頃訪れたい。

神無月・神有月

 この出雲大社で思い出されるのは,神無月,神有月の話である。それは,神無月は,神のいない月だが,それは日本各地の神が出雲に集まるからとされ,出雲では神有月と呼ぶというもの。
 いかにも,古来よりの言い伝えのようであるが,徒然草の202段では,神無月については,様々な説があるがとし,10月は各地で祭祀が行われないから神無月,あるいは,大神宮(伊勢神宮)に神が集まるから神無月とも。そうであるなら10月に伊勢神宮で祭祀が行われてもよいはずだが,そのような事はないとする。

 兼好の博学ぶりは徒然草でも実証済みであるから,少なくとも兼好の鎌倉時代には,この出雲の神有月の話は成立していなかったことになる。
 出雲地方の神有月は,近世になって,徒然草のこの段を読んだ出雲の者が言い出したのかも知れない。

神話のふる里

 出雲地方は,また神話のふる里でもある。日本各地にも数々の神話が残されているが,それは伝承というより日本書紀,古事記,とりわけ各地の風土記等に記されたものが語り継がれてきたと言える。
 それらの神話の中でも興味深いのは,日本国の誕生につき,「国作り」「国生み」「国引き」として,それぞれの書物にそれぞれ違った話として残されていることである。これを,平易にまとめたのが,石母田正他「物語による日本の歴史」(講談社学術文庫)である。神話や説話などの様々な物語が日本の形成に与えた影響などを,独自の視点で提供する。
 なお,出雲地方には出雲風土記がほぼ完全な形で残されているが,それを紹介した書物は少ないことから,入手も困難。
 一方,日本書紀,古事記については,沢山の解説書や読み下し本が出版されてはいるが堅苦しいうえ大部である。そこで,読みやすく,概要だけでもという人には,福永武彦訳「現代語訳古事記」,「現代語訳日本書紀」(河出文庫)がお勧め。福永の大胆な訳が読者を古代の壮大なロマンに引きずり込む。
 また,かなりのダイジェストであるが,阿刀田高「楽しい古事記」(角川文庫)は,極めて面白い。古事記が書かれた頃の日本の状況や神話成立の背景事情等を紹介したり推測したりしながら解説を加える。ギリシャ神話にも造詣の深い著者が,神話の神髄に触れる。気楽に読める一冊。

もう一つの国宝・秋野鹿蒔絵手箱

 鳥居をくぐってすぐ右脇に「神古殿」がある。管内には神話時代を中心に様々遺品が展示され当時の出雲地方の成り立ち等が理解できるようになっているが,その中に時代はやや下がるが,蒔絵の国宝手箱も展示されている。
 複製とのことであるが,そのような表示はない。

近くに

近くには日御碕(ひのみさき)神社と日御岬燈台がある。
日御碕神社は国宝工芸品「白糸威鎧」を所有しているが,現在は東京国立博物館に寄託されている。
 日御岬燈台は約40メートルの高さを誇る石積みの灯台。日本海の航行の安全を守る。

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