国宝建造物編119

| 山号・寺号 | 蓮華山富貴寺(ふきじ)旧称阿弥陀寺 |
| 所在 | 大分県豊後高田市蕗 |
| 起点駅・目安時間 | 小倉駅・2時間 |
| 経路 | 日豊本線,宇佐駅下車,バス40分 |
| 国宝建造物 | 1 大堂 |
| 国宝彫刻等 | なし |
| その他の国宝 | なし |
| 公開情報 | 雨の日には,内部観覧はできない。 |
| お薦め度 | ★★★★★ |
国東半島は,密教文化のメッカである。歴史の表舞台からは遠く離れるこの地に,大きな社寺や様々な史跡が残されているのは,どうしたことだろうか?。それらの寺がこぞって建てられた西暦800年頃,この地に一体何があったのだろうか?
両子山あたりから八方に流れる尾根は,二八谷と言われる国東半島特有の山有り谷有りの地形を産み出す。この急峻な地形が,山岳仏教にこのうえない修行の場を与え,付近では天台系密教が盛んに行われる。
国東半島一円にかけて深く山に分け入った修験者の数は知れない。
この背景には,広大な荘園を所有した宇佐八幡宮の財政的な支援があったことは否めない。この財政的基盤をもとに両子山を中心とした「六郷満山文化」が花開き,国東半島が九州密教文化の拠点となっていく。
宇佐八幡宮と密教との取り合わせは,いささか奇異ではあるが,「八幡大菩薩」に象徴されるように神仏習合はこの国東半島で,実際的かつ理論的根拠を見出し都に送り出されたと言っても過言ではない。
六郷とは,かつて国東半島に栄えた武蔵,来縄,国東,田染,安岐,伊美の六つの郷の総称である。
これらの郷やその周辺に両子寺,熊野摩崖仏,はては臼杵摩崖仏,遠くに英彦山等密教遺跡や社寺等がきら星のごとく連なり溢れんばかりの天台王国が形成さる。
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バスを降りてすぐに始まる石段をゆっくり登って行く。ほどなく仁王門が現れ,その中に丸く大きな宝珠が姿を現す。宝珠から四方に流れるような瓦葺きの美しい屋根が大きくなってくる。
その全貌が徐々に明らかになる時,「綺麗」,思わず声が出る。
鈍い銀色の甍を載せた古堂が何故美しく見えるのだろうか。
御堂を包み込む清浄な大気のせいだろうか,あるいはそれを抱く緑の木々のせいだろうか。
富貴寺大堂(おおどう)は,「蕗の大堂」とも呼ばれる阿弥陀堂である。
この,幹線国道から相当に深く入り込んだ山里の中に,単層宝形造り,本瓦葺きの御堂が声もなく佇んでいるのは,相当の驚きだ。
幾重にも入り組んだ山並みの中腹に,わずかばかりの平地を見つけて息づいている。この様な美しい御堂が世間に余り知られていないのは,やはり都会から距離をおいているからだろうか。

浄土への憧れは,末法思想の流行と共に平安末期頃からとみに強くなったと言われるが,都から相当に離れた,しかも天台密教のメッカとも言えるこのような辺地にまで及んでいたことは,驚異である。
この阿弥陀堂は,西国唯一の阿弥陀堂であり,九州最古の和様建築物でもある。 そして,中宮寺金色堂(bP),平等院鳳凰堂(bT7)とともに日本三大阿弥陀堂の一つに数えられている。
堂内には,極楽浄土を夢想させる極彩色の阿弥陀浄土変相図が残されていて,日本四壁画の一つに数えられる。
薬師浄土,釈迦浄土など四つの浄土が,東西南北にそれぞれ描き分けられているが,他にも内陣後壁に描かれた曼陀羅は,当麻曼陀羅の構成に類似していて興味深い。

境内には,石塔が数基立っている。その中にはこの地方特有の様式が用いられているとして「国東塔」と命名された塔が圧巻である。
また,境内入り口には数百年にわたり大堂に寄り添って生きた銀杏の大木が2本あり,秋には葉を黄金色に変える。
富貴寺はできれば,境内を金色の落ち葉で埋め尽くす晩秋に訪れたい。
金色の落ち葉の中から湧き出したような銀と漆黒の御堂。そのようなお堂前に立ちつくすと,これまでこの地にいかに多くの里人が浄土を見いだし,そこに願いをかけてきたかことか,思いめぐらすことができる。
富貴寺は,また,それらが風で取り除かれ,あるいは朽ちた後に,シンシンと雪が降り積もり白色に荘厳されたときにも訪れたい。誰も踏み入れていない白い境内の前に立つ。よく見ると境内脇にはに小動物の足跡だけがついている。
大分県には全部で4つの国宝がある。
この富貴寺大堂の他,宇佐神宮本殿(bP20),その宝物館に工芸品の孔雀文馨,それと臼杵摩崖仏,の4つである。
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