国宝仏編№3

国宝を訪ねて

大倉集古館

大倉集古館案内

名称 大倉文化財団・大倉集古館
所在地 東京都港区虎ノ門
最寄駅・目安時間 東京駅から30分
経路 東京駅から地下鉄・虎ノ門下車・徒歩10分
国宝建造物  なし
国宝仏 普賢菩薩騎象像 1件1軀
その他の国宝 2 絵画・書跡
秘仏・公開 一般公開 ケーキセットとのセット料金1600円

大倉集古館の国宝仏

仏像名 安置場所 備考
普賢菩薩騎象像 大倉集古館 木造

集古館展示室の星

 ホテルオークラ本館のすぐ前にある集古館は,オークラの創始者により集められた数々の美術品を所蔵しています。それらあまたの美術品の中で,この集古館のメインは何と言っても,国宝普賢菩薩騎象像でしょう。仏ではあるがあえて,神々しいと言いたくなる厳かさです。

普賢菩薩騎象像

 全高約140センチ,像高約55センチ。
 頭,体幹部は檜の1材から彫りだされています。
 
 普賢菩薩は,文殊菩薩とともに釈迦如来の脇侍です。
 文殊菩薩は獅子に,普賢菩薩は象にそれぞれ乗っています。また,文殊は智恵を,普賢は慈悲を表すと言われていますが,その様な眼であらためてお顔をのぞき込むと本当にやさしそうな切れ長の眼が少し下を,象の首あたりを見ています。
 また,頬から胸,そして蓮弁の上で結跏趺坐する両足もふっくらとした肉付きとなって,そのような特徴や割矧ぎ技法の完成度から平安時代後期の作と考えられています。
 この普賢菩薩は,単独で祀られることは少ないと思われますので,かつては,どこかの寺で釈迦如来,文殊菩薩とともに祀られていたものと思われます。
 どのような経緯で今この集古館にいますのかは,興味が尽きないところですが,財団側は,「大震災で記録が無くなりハッキリしないが,旧国立博物館の初代館長より譲り受けたもの」,としています。ややマネーロンダリング的な気がしないでもないですが,この国宝仏に限って言えば,ここ大倉集古館に祀られているのが一番相応しいようです。
 広い館内の一番奥に計算されたライトの下,揺らぐように置かれています。

 寺や宝物館で祀られている国宝仏の様に薄暗い堂内で,しかも数多の仏に混じって祀られていたのでは,これほどまでに輝くことはないと思われます。
 ここ大倉集古館は,京都は別として,都会の中で国宝仏を鑑賞できる唯一の美術館と言ってもさしつかえないでしょう。
 
 なお,普賢菩薩は,悪人,女人の往生を助ける菩薩と考えられ,平安時代以降の女性の心をとらえています。

普賢

 石川淳の第4回芥川賞受賞作に「普賢」があります。
 馥郁たる普賢行につながろうとする一念を秘めて暮らしていた「わたし」は同級生の庵文蔵と暮らすことになる。
 その文蔵にユカリという妹がいたが,普賢菩薩が仮の姿を宿しているようなユカリに,わたしは長い間恋していた。しかし,ユカリに再び出会ったときは,特高警察に追われる恋人と共に地下に潜伏する身となり,過酷な逃亡生活のためか,ユカリにかつての面影はなく夜叉の相貌ほどにすさんでいた。・・・・・・

山越の阿弥陀像の画因

 また,大倉集古館には冷泉為恭筆の阿弥陀来迎図が所蔵されています。この来迎図の集古館における展示を巡り,折口信夫が「山越の阿弥陀像の画因」『折口信夫「死者の書・身毒丸」(中公文庫)収録』をものしています。
 山越阿弥陀来迎図とは,いうまでもなく山の端を前にあるいは後にして遠近法により巨大な阿弥陀を描出する平安時代後期に流行した絵画です。その迫力には眼を瞠るものがありますが,この来迎図,現在でもかなりの数が遺されています。
 この来迎図について,小林秀雄は,「偶像崇拝」『モオツァルト・無常という事」(新潮文庫)収録』においてこの折口の「山越の阿弥陀像の画因」を引用して観無量寿経のドグマを超えている,としています。

 ついでながら,この来迎図に関する両者の文体を見ると,折口,平明,小林,難解との図式がハッキリとしてきます。ここにおいて,坂口安吾「教祖の文学」『坂口安吾「堕落論」(新潮文庫)収録』を引くまでもなく,小林の分かりにくさは,はしなくも露呈された感がありますが、小林のほとんどのエッセイは,一体,あれほどまでに分かりにくい表現でしか,表現あるいは評釈できないのか,いぶかしいかぎりです。庶民にとっては,悪文の極み,ではないのでしょうか。
 もっとも坂口の前掲における批判は,もっぱら評釈技法やその内容に関するものですが,その前に読み手を前提に評釈は成立するのであって,一部の暗号解読を得意とするような特殊階級を大向こうに見据えた評釈は,取るに足らない,と評されても仕方がないように思われます。
 ここでは,徒然草の,狛犬の話が連想されます。

至福の一時

 ここ大倉集古館には,この国宝普賢菩薩騎象像の他に,国宝の絵巻と書跡があります。個人として国宝3件を収集した,財力はともかく,眼力はなかなかのものです。
 なお,国宝絵巻と国宝書跡は,数年に一度程度公開されるにとどまりますので、平素からのチェックが必要です。
 
 普賢菩薩を拝して心豊かになった後は,入館料とセットになったケーキとコーヒーをいただきましょう。
 ホテルオークラ本館庭園レストランでの優雅な時間は,まさに至福の時と言えます。                       

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