国宝仏編№32

| 山号・寺号 | 忍辱山円成寺 |
| 所在地 | 奈良市忍辱山(にんにくせん)町 |
| 最寄駅・目安時間 | 新幹線京都駅から1時間30分 |
| 経路 | JR・近鉄奈良駅からバス |
| 国宝仏 | 大日如来坐像 1件1軀 |
| 国宝建造物 | 1 (国宝建造物編№66) |
| その他の国宝 | なし |
| 秘仏・公開 | 公開 |
| 仏像名 | 安置場所 | 備考 |
| 大日如来坐像 | 多宝塔 | 1軀 |
奈良市の東方、のどかな田園が広がる中を柳生街道が走っています。円成寺は,その脇にあります。その創建年代については,天平時代とも,もう少し時代が下がるとも言われています。
もともとは寺の一部だったのでしょうが,公園のように整備された池の脇から入母屋造の重文楼門を潜り山内に入ります。
山裾の狭い平坦地に本堂をはじめとして,国宝春日堂、白山堂の他こじんまりとした堂宇が立ち並んでいます。
その一つに国宝大日如来を安置する真新しい多宝塔があります。平成年代になって再建された建物です。
像は,檜材を用いた寄木造です。表面には金色の漆が塗られていますが,一部剥がれていてそれが年月に荘厳されたような厳かな風合いを醸し出しています。
宝髻は異様に高いのが特徴の一つとなっていて,その一本,一本が丁寧に彫り込まれています。その上に宝冠が被せられています。
また,眼には水晶の玉眼が嵌め込まれていますが,玉眼の作例としては,極めて初期のものと言われています。
像高は約1メートルとさして大きくはありませんが,全体として均整のとれた実在の人物の外形に近く,眼から鼻,唇にかけても写実的でほれぼれする顔立ちです。
印は智拳印を結んでいます。智拳印とは,忍者のように左手の人差し指を立て拳を造ります。その人差し指を右手で握り込みます。智拳印を結んでいることにより,この大日如来が,智恵をあらわす金剛界の大日如来であることがわかります。
大日如来には金剛界の大日如来と胎臟界の大日如来があります。智恵の金剛界に対して理性の胎臟界があります。この胎臟界を統べる大日如来は法界定印を結んでいます。左手の掌を上に向けその上に右手の甲を載せ二本の親指を軽くふれあわせます。法界定印は最高の悟りをあらわしています。
この像は,平安後期から鎌倉初期にかけて,父康慶とともに活躍した運慶20歳代の作品とされる貴重なものです。運慶は誰を思い描きながら鑿をふるったのでしょうか,運慶の若き感性と情熱が乗り移ったような傑作です。
また,この像には,制作者の花押と署名があり,作者自らが名を記した最古の例と言われています。
それまでの仏像には,製作依頼者の名が記されることはあっても,作者の名が記されることはありませんでした。この時期を境に仏師の独立性と自己主張がハッキリするようになってきたと思われます。仏像制作に携わる者が,単なる工人から技術者へ,そして彫刻家,芸術家へと飛躍するエポック的仏像と言えます。
なお、この像は平成5年に国宝に指定されました。比較的新しい指定です。
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