国宝を訪ねて 国宝建造物編67

新薬師寺

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 たびびとの めにいたきまで みどりなる
     ついぢのひまの なばたけのいろ

会津八一 鹿鳴集・南京新唱
山号・寺号 日輪山新薬師寺
所在地 奈良市高畑町福井
起点駅・目安時間 京都駅・50分
経路 近鉄奈良駅・バスまたは徒歩20分 
国宝建造物 1 本堂
国宝仏等 2 薬師如来座像・十二神将立像(国宝仏編bQ9)
その他の国宝 なし 
お薦め度 ★★★★

国宝・新薬師寺本堂

高畑の里

 新薬師寺は聖武天皇の病気平癒を祈願して光明皇后により建立された。天平の香りを少し残す奈良高畑の里に佇む古寺である。
 秋に訪れると,またの名を,「萩の寺」と言うように境内は黄金色の萩で覆われる。萩の葎の中に,所々,白や赤,薄赤の寒椿がアクセントのように挟まっていていて,とても美しい。
 砂利の敷かれた本堂の前には,石灯籠がポツンと置かれていて,秋篠寺と同じ配置である。

                     天平の風来たりて萩騒ぐ (秋雨)      

本堂と国宝仏像群

 本堂は銀色にくすんだ甍に覆われ,天平の風情を色濃く残す。
 本堂に一歩足を踏み入れると,そこには,中央に円形仏壇が置かれていて沢山の仏像が安置されている。中でも本尊がすばらしい。それもそのはず、国宝・薬師如来座像である。
 仏教に帰依していなくとも思わず跪いてしまうその御姿は、折しも沈みかかった西日を受けてまばゆいばかりである。
 その座像を囲むように,これも国宝の12神将が取り巻いている。その雄々しく,しかも威厳に満ちた一つ一つの表情に思わず見入ってしまうが,その中に,なにやら見慣れた気がする顔がある。そう,500円切手でお馴染みの婆娑羅(バサラ)である。
 
 この12神将,実はこのうち11体だけが国宝に指定されている。事情は不明であるが,一体だけ昭和年代の作である。はたしてこの新参者を見つけられますか?

近くに白毫寺

 天平の情趣を色濃く残す奈良手つかずの最後の寺,白毫寺は,ここから高円山の山裾を20分ほど歩く。

歌人・志貴皇子

 白毫寺は「志貴皇子」の屋敷跡を寺としたところ。
 志貴皇子は天智天皇の第4皇子であったことから,天武朝では厚遇されることはなかった。ほとんど表舞台に立つことはなかったが,万葉集の秀歌として必ず言及される五首の歌を寄せて存在感を示している。
 中でも有名でかつ秀逸の誉れが高いのは次の一首であろう。

いわばしる 垂水の上の さ蕨の 萌出る春になりにけむかも
志貴皇子

 志貴皇子の歌は調べの高いものが多いが,少し変わったところでは,

むささびは 木ぬれ求むとあしひきの 山の猟夫にあいにけるかも
志貴皇子

 という歌も万葉集にある。
 
 楽しそうに木々を飛び回るむささびも,その木の上を目指すという習性が仇となり猟夫(さつお,猟師のこと)につかまってしまうだろうな,というしみじみとした歌である。
 しかし,他の四首に比較して趣がかなり違うことからこの歌の中に寓意を読みとる立場も多い。
 政争に巻き込まれ,志半ばで死を賜る,あるいは殺された有間皇子,大友皇子,大津皇子らの生涯を想い起こさせる,とするのである。
 
 しかし,そんな解釈を斎藤茂吉「万葉秀歌」(上・下巻)(岩波新書)は厳に戒めている。この新書は,万葉集の中から約400首を茂吉が選び,解説したもので,新書の隠れたベストセラーである。
 品格溢れる格調高い解説には,共感すべき点が多い。ちなみに志貴皇子の五首は全てこの中に選ばれている。
 万葉集の入門書としてまず読みたい本である。

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